この記事で分かること
- 住宅を購入しようとしているが、何から始めていいのか分からない。
- 注文住宅や建売住宅などの違いが分からない。
- 規格注文や建築条件付きって何なの?
住宅の種類や、それらのメリット・デメリットを含め解説いたします。
この記事を読んで、住宅購入の初めの一歩を踏み出しましょう。
この記事を書いている人
廣岡 旬 Hirooka Jun
- 元住宅メーカーの部長
- 卒業設計コンクールで最優秀賞受賞
- 設計担当した物件が建築雑誌に掲載
- 住宅資材の開発に携わる
- 用地仕入・施工・設計など携わった職種は多岐にわたる
- 建築業界で20年以上従事
- 現在は住宅のコンサルタントをしながら、住宅業界に関わる情報を発信
住宅の種類は3種類
購入を前提とした住宅は、注文住宅・分譲住宅・中古住宅のたった3種類しかありません。
「新築しか買わない」という方は、さらに2種類だけになってしまいます。
ここでは「新築」に絞り込んでご説明します。
新築に絞り込んだとしても、ハウスメーカーごとに色んな商品がありますよね?
これはハウスメーカー側が「所得の低い人・高い人」「4人家族、2世帯家族」など、幅広いユーザーを取り込もうとする戦略から、色んな商品が生まれているだけです。
いくつか例を上げましょう。
例1 賃貸併用住宅
「家賃収入を得ながら、住宅に住みたい!」という理想的なタイトルですが、どちらも中途半端に終わる可能性が高い商品です。これは注文住宅に賃貸アパートを付け足しているだけです。
このタイプで建物を建ててから売るという、いわゆる建売住宅は中古を除けばほぼないでしょう。(少なからず筆者は見たことがありません)
例2【建築条件付き土地】
またの名を売建住宅といいます。これはハウスメーカーが所有している土地の上に、注文住宅を建てます。
なのでこれも注文住宅です。
単に自分が所有している土地か、ハウスメーカーが所有している土地に建てるかの違いです。
せっかく自分(ハウスメーカー)が所有しているのだから、自分たちの商品で建ててもらおうということです。
例3【規格注文住宅】
おもいっきり答えが書かれていますが、その名のとおり注文住宅です。
ハウスメーカーのように毎年何万世帯もの建物を建てていると、お客さんのこだわりが強すぎたり、家族形態が特殊(10人家族など)でもない限り、お客さんが選択していく間取りって意外にかぶってくるんですよね。
業界では「売れ線の間取り」と言われたりします。
家族の数だけドラマはありますが、家族の数だけ間取りはありません。
- 「土地の形状」
- 「建物の大きさ」
- 「家族の人数」
- 「予算」
この4つの条件で選択肢は相当少なくなります。
最近はWEBの進歩により、間取りシミュレーションが充実してきました。
試しに「規格住宅 シミュレーション」と検索してみてください。
たくさんあるように見えますが、何回かやっていると間取りがかぶってきます。
察しの言い方はお気づきかと思いますが、規格注文住宅は、ハウスメーカーがお客さんと間取りの打ち合わせをする手間を省くことのできる商品なのです。
だからフルオーダーメイドの注文住宅より安価なのです。
3つほど例を出しましたが、全ての商品が注文住宅・建売住宅・中古住宅の3種類(新築なら2種類)に分類されます。
賃貸がくっついたり、規格化したり、平屋だったり、構造が違ったりといったオプションが付いているだけのことです。
これらを理解した上で相談に行くと「あぁこれ収納を充実させただけの規格注文やな」という風に、商品の本質を見抜くことができます。
メリットとデメリット
メリットとデメリットは購入者の置かれている環境や状況によって違います。
例えば仕事や子育てに追われる毎日で、手間をかけずに住宅を購入したい方がフルオーダーメイドの注文住宅を選択するのはデメリットになる可能性が高いです。
逆にこだわりがありすぎて、あれもこれも自分で決めたい方にとってはメリットになります。
ここでは「どういった方にとってメリット(デメリット)になるのか?」をご説明します。
注文住宅のメリット・デメリット
規格注文住宅や建築条件付き(売建住宅)も該当しますが、ここではフルオーダーメイド住宅を前提に説明します。
価格が高いのは皆さんご存じなので、少し違う角度から説明させていただきます。
注文住宅のメリットは「間取りやキッチンなどの住宅設備機器を自由に選べることができることだ」と思われがちですが、住宅知識がない方にとってはデメリットになる可能性が高いです。。
理由は以下の通りです。
購入者の知識がないがゆえに、プランナー(設計士やコーディネーター)の力量に大きく左右されてしまいます。
名刺の肩書には「設計部」とか「プランナー」「デザイナー」と書かれていても、無資格者であったり、実務経験が1年未満といったプランナーも少なくありません。
注文住宅の場合、打ち合わせの回数や時間だけでなく、打ち合わせの内容次第では、次回の打ち合わせまでに決めないといけないことも「宿題」としてお持ち帰りしないといけなくなります。
スムーズな打ち合わせになるかどうかも、プランナーの力量に左右されるわけです。
この打ち合わせに要する時間はハウスメーカー側にとって、「原価(正確には労務費)」として予算の中に、結構な割合でのしかかってきます。
ハウスメーカー側からすると注文住宅は「時間がかかる、手離れの悪い商品」なんですね。
これらを吸収するため規格注文や建売住宅よりも、利益率が高く設定されます。(そうせざるを得ない)
分譲住宅のメリット・デメリット
分譲住宅(建売住宅とも言う)はハウスメーカーが自社所有の土地に建物を建ててから販売する住宅です。
分譲住宅はハウスメーカーだけではなく、ビルダー・デベロッパー(分譲住宅に特化して事業を行っている会社)や工務店、不動産業者なども事業として行っています。
分譲住宅のメリットは注文住宅よりも安いということです。
近年は注文住宅もローコスト化してきていますが、それでもまだ分譲住宅の方が安い傾向にあります。
ただし、分譲住宅業界も同業者との差別化を図るため、多様化が進んでおり、注文住宅が建てられるくらいハイコストな商品も販売されています。
分譲住宅はポータルサイトでエリアや価格など条件に応じた物件を手軽に検索できるというメリットもあります。
注文住宅と違い土地・建物を一括で買うため、手続きも簡単です。
しかも、現物を確認することができるため、引渡し時に「思うてたんとちゃう。。」とはならないです。)
デメリットがあるとすれば「間取りが選べない」ことが上げられますが、住宅を購入される多くの方は「エリア」と「価格」のどちらかの優先順位が高く、「間取り」や「デザイン」はその次くらいになるため、最低限の要素が満たされていれば、デメリットという程でもないと考えれらます。
ただし、分譲住宅は完成してから販売するという特性上、「一部の人(家族)に適した建物」ではなく「大多数の人(家族)に適した建物」になりがちです。
1つ例をあげると、住宅購入者の多くは3~4人家族(ぎり5人)です。この家族構成のゾーンにめがけた商品(主に間取り)は4LDKが主流となります。
そのため、1LDKや8LDKの住宅が欲しいと思っても、分譲住宅では販売している会社は皆無です。
郊外や差別化としての5LDKはありますが、数は少ないです。
分譲住宅で重要なのは、「どんな間取りの建物を買うか」ではなく「どこの住宅会社から買うか」です。
分譲住宅の場合、構造は木造住宅一択になるといっても過言ではありません。
近年は木造住宅に関する様々な法整備がなされているため、品質が向上していますが、まだまだ「会社だより」的なところがあり、お世辞にも「どこの会社で買っても同等品質」とは言い難い状況です。
住み初めは気づかなくても、年月が経った時に「思うてたんとちゃうかった。。」となってしまいます。
まとめ
注文住宅がメリットになる方
- 住宅における知識のある人
- 細部にまでこだわりたい人
- 既に土地を持っている人
注文住宅がデメリットになる方
- 予算がない人
- 特殊な条件を除き、戸建住宅のカテゴリーでは注文住宅が一番高価。
- 手間をかけたくない人(自分で決めるのが面倒な人)
- 土地を持っていない人
番外編 ~自分はデメリット側に該当するが、どうしても注文住宅で建てたい方~
予算がなく手間もかけたくなく、土地も持っていないけど注文住宅が欲しい方は、建築条件付き(売建住宅)をオススメです。
予算がなく手間もかけたくないが、土地は持っている方には、規格注文がオススメです。
分譲住宅がメリットになる方
- 土地を持っていない方
- 購入から入居まで手間暇かけずにおこないたい方
- 少しでも予算を抑えたい方
分譲住宅がデメリットになる方
- 大家族(6人以上)の方
- 小家族(1人~2人)の方
おわりに
住宅の着工数は1973年の約190万戸をピークに年々減少しており、2021年時点で約85万戸まで減少しています。
これによりハウスメーカー同士の競争が激化し、生き残りをかけて各社さまざまな商品をリリースしています。
商品が多様化した結果、購入者を困惑させることになっていると思われます。
購入者を悩ます「多様化した住宅」ですが、少なからずこの記事を読んでくださった方は「自分が購入できる住宅は注文住宅・分譲住宅・中古住宅のたった3種類しかない」ということをご理解いただけたのではないでしょうか。