「不動産業者さんは、この土地で住宅を建てることができると言っているけど、問題ないのかな?」
不動産購入における、初心者さんの漠然とした土地に対する不安を、解消いたします。
住宅業界歴20年超えの筆者が、土地探しにおける見落としがちなポイントを分かりやすく解説いたします。
住宅購入の参考になれば幸いです。
この記事で解説する内容
- 住宅用不動産のチェックポイント
- 斜線制限のチェックポイント
- 高低差のある地域
- インフラに関するチェックポイント
前提条件
この記事では、不動産業者、またはハウスメーカーなどから土地情報を受け取り、住宅を建てることができる土地を前提に解説します。
この記事を書いている人
廣岡 旬 Hirooka Jun
- 元住宅メーカーの部長
- 卒業設計コンクールで最優秀賞受賞
- 設計担当した物件が建築雑誌に掲載
- 住宅資材の開発に携わる
- 用地仕入・施工・設計など携わった職種は多岐にわたる
- 建築業界で20年以上従事
- 現在は住宅のコンサルタントをしながら、住宅業界に関わる情報を発信
住宅用不動産のチェックポイント
建物を建てる場合、区域区分と地域地区によって、その場所で建てられる用途や規模に一定の制限を設けています。
これを理解しようとすると、試験勉強みたいになってしまうため、ここでは膨大にある規制の中から、住宅を建築する上で知らなければ損失が大きくなる部分を抜粋し、解説いたします。
区域区分
日本では都市計画法という法律によって、次のような区域区分に指定されています。
都市計画区域 |
都市計画区域外 |
準都市計画区域 |
都市計画区域はさらに[市街化区域][市街化調整区域][非線引き区域]の3つに区分されます。
この都市計画区域内の市街化区域に見落としがちなポイントがあります。
それ以外の区域については・・・
- 建築に関する規制が緩やかなため、見落とすポイントが少ない
- 建築できない区域もありますが、不動産業者がそんな情報を提供してこないことが前提
という理由により、詳細説明は割愛します。
地域地区
市街化区域には地域地区という、一定の規制などをしている地域があります。
地域地区は大きく分けて[用途地域]と[地区計画]に分かれます。
用途地域
用途地域は13種類あり、大きく次の3つに分類されています。
住居系地域 |
商業系地域 |
工業系地域 |
それぞれ建物の用途や大きさなどの制限が設けられています。
住居系地域では、一部の例外を除き、映画館などの遊戯施設や工場を建てることができません。
しかし、住宅は商業系地域、工業系地域(工業専用地域の除く)全ての地域で建てることができます。
土地を探す際は、まず住居系地域から探していくことが望ましいでしょう。
ここで注意が必要なのは、住居系地域とその他地域の境界が、隣り合わせになっていることがあるということです。
こちらの図をご覧ください。
住居系地域と商業系地域が隣接している例です。
商業系といっても生活に支障のない地域もあるため、一概に商業系地域は避けた方が良いとはいいきれませんが、できれば図のような境界ギリギリの場所ではなく、住居系地域の中心部あたりに住みたいところです。
続いて工業系地域と隣接している例です。
この図はかなり特殊なケースですが、こういった地域は決して少なくはありません。
住居系地域といっても、こういった地域は、将来的に大型工場が建設される可能性もあるため、なるべる避けたほうが無難と言えるでしょう。
その他の地域地区
建築協定や特別用途地区など、色々な項目が存在しますが、ここでは用途を住宅に絞り込んで解説します。
防火地域/準防火地域 | 火災に対して、有効な建物仕様にすることを求められる地域です。他の地域と比べ、建物コストが高くなります。 |
風致地区 | 現状の地域の風景や景観を維持するための地区。 京都の観光地をイメージすると分かりやすいかと思います。風致地区によって景観が維持されています。 建物の大きさやデザインに関する制限の他に、土地を造成する際にも制限を受けるため、注意が必要です。 |
高度地区 | 高さ制限のある地域です。北側斜線による制限も受けるため、2階建ての建物であっても制限を受けることがあります。 |
地区計画 | 「〇〇町(町名)地区計画」というように、ごく一部の地域で建築制限を受けます。 建築協定と言われたりもします。 地域ごとで制限の内容が変わるため、こういった地区計画に該当する場合は、内容をよく確認する必要があります。 |
埋蔵文化財包蔵地 | 地中に歴史的価値のある埋蔵品が埋まっている(埋蔵文化財)可能性のある地域です。 「こんなところが?」と思うような地域が指定されたりもします。 造成する際に役所の立ち合いが必要になったり、歴史的に重要な埋蔵品が発掘された場合には、発掘作業のために、何カ月も工事をストップするなんてこともあります。 |
斜線制限
斜線規制は下図のように3つあり、この斜線の範囲内に建物を建てなければいけません。
道路斜線
住宅で制限を受けるケースは少ないですが、前面道路の幅員が5メートル未満の場合には、制限を受ける可能性が出てくるため、道路幅員はチェックしておきましょう。
上図のように道路の幅員が狭いと、道路斜線の影響を受けやすくなります。
隣地斜線
住宅で制限を受けるケースは皆無なので、気にしなくてもよいでしょう。
北側斜線
住宅において、一番影響を受けるのが北側斜線です。
ただし、土地の向き(方位)によって影響度合いが大きく異なります。
一番影響を受ける向きは真北に隣地がある場合です。
高低差のある地域
高低差のある地域では、盛土/切土や擁壁などの造成工事が発生する可能性が高まります。
こういった地域は土砂災害を防ぐために、建築工事において、一定の制限が設けられています。
次に掲げる3つの区域は、住宅地で指定されているケースは少ないですが、万が一該当していた場合、都道府県知事の許可が必要となるため、注意しましょう。
急傾斜地崩壊危険区域 | 特定の急斜面の地域で土を触る工事によって、その急斜面に悪影響が起きないよう、造成工事などの制限を設けている地域 |
地すべり防止区域 | 地すべりを防止するための施設整備や、建築などの制限を設けている地域 |
土砂災害特別警戒区域 | 土砂災害が起きたときに、建物損壊や住民に危険が生じるおそれのなる地域で、建築物の構造などの制限を設けている地域 |
宅地造成工事規制区域(宅造区域)
広範囲のエリアに渡って規制されているため、購入を検討している住宅地周辺に坂道が多い場合、該当する可能性が高いです。
宅造区域で住宅を建築すること自体は、まったく問題ありませんが、規制の対象となった場合、次のようなデメリットが発生します。
- 開発許可申請が必要となり、申請費用がかかる
- 工期が長くなる
- 擁壁などの土木工事は、都道府県の定める仕様となり、割高なコストとなる。
デメリットをまとめると、時間とコストがかかるということです。
検討地が宅造区域に指定されている場合であっても、できるだけ規制の対象にならない建築計画にできると良いでしょう。
インフラに関するチェックポイント
住宅業界でインフラとは「ガス」「上下水」を指しますが、「通っているから大丈夫」と安心してはいけません。
ここにコストアップする要素がふんだんに盛り込まれています。
ガス
大きく分けて「都市ガス」と「プロパンガス」に分かれています。
都市ガスは前面道路に本管が通っていなければ、利用することが困難です。
名前のとおり、インフラ整備の進んでいる都市部で利用されています。
一方、プロパンガスはボンベを設置して使用するため、どこでも利用可能です。
多くのハウスメーカーは、どちらのガスか?説明してくれるかもしれませんが、「プロパンガスの方が利用料金が高い」というところまでは説明してくれないでしょう。
ガスについては土地の物件情報欄に必ず記載がありますが、ごくまれに「都市ガス」と明記されているのに、前面道路に本管が通っていないケースがあるので、しっかり確認しましょう。
上下水
ここでは前面道路に本管が通っていることが前提で解説します。
たまに敷地内まで、引き込みがされているケースがありますので、そのときは費用が安く済みます。
ポイントは本管がどこに通っているか?です。
次の図をご覧ください。
図面上部の平面図は本管が敷地からどれだけ離れているか?を表しています。
図面下部の断面図は本管の道路からの深さを表しています。
本管の距離が敷地から離れていれば離れているほど、コストは膨れ上がっていきます。
本管は上水と下水の2つあります。
上水と下水は近い場所を通ることが多いため、上水が敷地から離れていると、下水も離れている可能性が高いです。
この距離によるコストは100万円近くかかることがあります。
以上が【失敗しない土地探し】でした。住宅購入の参考になれば嬉しいです。