そもそも住宅会社ってどんな仕事なの?
住宅会社ってよくブラックって言われているけど本当なの?
[住宅 営業]と検索すると必ず、予測変換で[やめとけ]と出てきてしまう住宅業界ですが(笑)
ここではそんなネガティブな情報だけではなく、ポジティブな情報も分かりやすく解説していきます。
こんな悩みを解決します。
- 住宅会社の仕事内容
- 住宅会社の年収や将来性
- 今後住宅会社で働くべきか
- 住宅会社で働くには?
この記事を書いている人
廣岡 旬 Hirooka Jun
- 元住宅メーカーの部長
- 卒業設計コンクールで最優秀賞受賞
- 設計担当した物件が建築雑誌に掲載
- 住宅資材の開発に携わる
- 用地仕入・施工・設計など携わった職種は多岐にわたる
- 建築業界で20年以上従事
- 現在は住宅のコンサルタントをしながら、住宅業界に関わる情報を発信
住宅会社とは|新築住宅を建てて売る(売って建てる)会社の総称
住宅会社とは新築住宅を建てて販売している会社の総称です。
分かりやすく書くと
先に建ててから販売する住宅会社 | 分譲住宅会社 |
先に販売(契約)してから建物を建てる住宅会社 | 注文住宅会社 |
となります。
あれ?2種類だけ?と思われますが、この2種類しかございません。
「ハウスメーカーと工務店は違うんじゃないの?」
「さすがに不動産会社と住宅会社は違うでしょ」
という声が聞こえてきそうですが、まずは住宅会社の仕事内容を見てみましょう。
住宅会社の仕事内容
それでは仕事内容をもう少し詳しくご説明します。
用地仕入
- 町の不動産屋さんや大手仲介業者さん、または地主さんへ訪問し、土地の情報をもらう(営業)
- もらった土地の情報をもとに、土地・建物費用に利益を乗せて、採算が合うのか試算する(試算)
- 採算が見込めれそうなら土地を購入する(契約)
販売
- 昔は[飛び込み営業]みたいなことは平然と行われていましたが、今はメールや電話で問い合わせの来たお客さんの対応や、住宅展示場(もしくは自社のモデルハウス)に訪れたお客さんの対応がほとんど。
- 銀行へお客さんがローンを組むことができるのか審査をしてもらう手続き。事前審査と本審査があり、契約前に事前審査をして、概ね問題なければ、契約後に本審査を行う(ローン審査)
- ローンの事前審査が通れば、契約書や重要事項説明などの書類を作成し、契約を締結します。(契約)
設計
- お客さんと契約するために、簡易的に間取り図を作成(プランニング)
- 概ね間取りが決まれば、積算に必要な図面を作成(基本設計)
- お客さんと契約を締結できれば、基本設計をもとに、実施設計と構造計算をおこなう(実施設計、構造計算)
積算
- 設計図をもとに、あらかじめ単価が分かっている資材は、長さや面積を拾い積算を行います。キッチンなどの住宅設備や、職人さんの施工費などは、メーカーさんや職人さんへ見積依頼を行います。
- お客さんとの契約ができれば、見積を取ったメーカーさんや業者さんへ発注します。
- メーカーさんや業者さんから資材が納品されたり、職人さんの施工が完了すると、請求書を提出してもらいます。見積金額と請求金額が合致していれば、振り込み手続きを行います。
施工
- 現場監督さんが現場におもむき、設計図どおりに施工がされているかチェックします。
- 工事内容に応じて、職人さんの手配や、職人さんが施工するタイミングに合わせて、メーカーさんや業者さんに資材を納品してもらうよう依頼します。
- 工事が工程どおり進んでいるのかチェックします。予定よりも工事が遅れていたら、職人さんへ施工する期間を短くしてもらったり、工事期間を延ばしたりします。
アフターサービス
- 引き渡しを終えたお客さんから、建物の不具合(建具の建て付けが悪いなど)の連絡を受けた際に、不具合を是正します。
- 住宅会社によっては定期点検(半年点検や2年点検など)を実施しており、これらの点検もアフターサービスで行います。
仕事内容の違い
基本的にどの住宅会社も仕事の内容は変わりませんが、会社の規模によって、より細分化されていたり、いくつかの仕事を兼務したりします。
会社の規模による違い
かなりざっくりですが、仕事の内容は会社の規模によって、大きく3つに分かれます。
- 小規模 15人〜50人未満くらい
- 中規模 50人〜500人未満くらい
- 大規模 500人以上
小規模
この規模の住宅会社は、業務を兼務していることがほとんどで、設計や施工(特にアフター)などを外注しているケースが多いです。
営業と設計を兼務していたり、施工と積算とアフターは現場監督が担当しているケースが多いです。
中規模
ここはかなり大雑把なくくりにしていますが、100人を超えてくるあたりから、セクション(部署)がしっかり分かれてきて、隣の部署の仕事内容が「なんとなくやっていることは分かるけど、具体的にはよくわからない」といった組織関係になってくる一方で、部署間で責任の所在が明確になってきます。
従業員の働く環境を意識しだすのも、この規模の特徴で、新しいシステムを導入し、長時間労働をなくそうと動き出します。
しかしながらこの規模では、寄せ集めのメンバー(もしくは経営者のトップダウン)によって、経験値もない中、本業のかたわらでシステムの検討から導入、運用までおこなうためうまく機能することはほとんどありません。
「システム導入されたけど長時間労働はなくならない」といった状況になります。
まだまだベンチャースピリッツがメラメラと燃えてりおり、「会社を変える!」「社会を変える!」といったソルジャー社員が大いに受け入れられる規模です。
大規模
このクラスの住宅会社は旧財閥系や鉄道系といった大手企業や、県内No1の地域ビルダーが該当します。
完全とっていいほど、セクションに分かれており、全く経験したことのない部署に異動することも少ないですが、全国展開していることも少なくないため、転勤になることもあります。
使い勝手はさておき、社内システムも整備されており、仕事するための環境は整っていると言えるでしょう。
しかしながら社内規則によって、かなり細かい部分までルール化されていることから、個人の権限は無いに等しいといっても過言ではありません。
「会社を変える!」「社会を変える!」といったソルジャー社員は、建前では「威勢があっていいねぇ」とウェルカムな感じですが、本音としては「ルールを無視しそうで面倒臭いヤツ」と思われることでしょう。
住宅会社の年収
平均年収を見てみましょう。
住宅会社の魅力の1つがこれです。
とにかく年収が高い!
成果主義な傾向にある業界がゆえに、取れる果実(年収)も大きいというわけですね。
ブラック業界と思われがちですが、年収にこだわりたい方にしてみればチャンスです。
なぜなら、未経験者でもこの業界に入ることができるからです。
ただし、年収1,000万円超えの猛者がゴロゴロしている業界なので、その逆の年収500万円以下の方もたくさんいるということです。
それでも他の業界に比べれば高水準といえるのではないでしょうか。
住宅会社のメリット・デメリット
住宅会社で働く際のメリットとデメリットをご説明します。
メリット
- 年収が他の業種に比べ高い(業種別ランキング第5位:マイナビ転職調べ)
- 色々な職種の仕事がある(設計・施工・営業・販売促進 など)
- ワークライフバランスが取れる(高い年収を望まなければ)
- どこの住宅会社でも働ける
- 職種に応じた国家資格がある
- 学歴はほぼ関係ない
- ブラックの中にもホワイトあり(砂漠のオアシスが存在する)
資格があってもなくても、働き口に困ることのない業種です。また、稼ぎたい人・ワークライフバランスを重視したい人など、希望に応じた職種があるもの、住宅会社のいいところです。
デメリット
住宅会社で働くデメリットの内容はよくご存知かと思いますが、意外な項目もあります。
- 残業が多い
- 未経験の職種に異動になる
- パワーハラスメント気味の社員が多い
- 有給休暇が取りにくい
- クレーム処理が面倒
- 土、日、(祝日)が休みではない
「メリットで書いていることと違うじゃないか」という項目もありますが、これはご自身のキャラクターや会社に対するスタンスによって、メリットにもデメリットにもなりうるということです。
ちなみに筆者は、よく(というより、必ず)デメリットに傾いてましたが、その甲斐あってなのか住宅事業の歩き方が分かるようになり、独立することができました。
住宅の仕事に向いている人・向いていない人
誰にでも向き・不向きはあります。
- 住宅が好き(興味がある)
- 人とお話しするのが好き
- スケジュールを立てるのが得意
- デスクワークも体を動かす仕事も好き
- 給料がたくさんもらえるなら、残業しても(もしくはプライベートを削っても)よいと思っている
- 物事を構築的に考えることが好き
- 考えるよりも先に体が動く
- 誰とでも真面目に向き合える
多くの項目に当てはまっている人は、住宅の仕事に向いていると言えるでしょう。
ただし、1の[住宅が好き]に当てはまらない人は、他の項目に多く該当したとしても、仕事と思って割り切れる覚悟がないと長続きしないでしょう。
一方でこれらの項目にほとんど当てはまらない人も、悲観的になる必要は全くございません。
住宅会社には、たくさんの職種があります。
ほとんど人と接することのない仕事もあれば、毎月のノルマに追われなくてもよい仕事もあります。
住宅会社の社員は、ブランド物の時計・ベルト・財布の三種の神器を身につけて、ギラギラした目でグイグイ行くようなイメージがありますが、そういった社員はごく一部です。
事実、筆者が務めていたとき(今もですが)は、シャツは無印良品でパンツはユニクロのカラーデニム、靴はオールバーズという何ともラフな格好で仕事をしていました。
とにかく職種がたくさんあるので、どれかに当てはまることは間違い無いでしょう。
住宅会社で働くための必要なスキル
必要なスキルは2つだけです。
- 住宅が好き
- 誰とでも真面目に向き合える
設計や施工などの専門知識は、働きながら勝手に身につきます。
住宅はたくさんの専門知識(や現場経験)が必要となりますが、多くの住宅会社はこういった専門知識を、どうやって簡単に早く習得してもらうのか考え、マニュアル化されています。
そのため、働き出した時に知識がなくても、すごい角度で専門知識が身に付いていきます。
「新入社員が3年後に、10年選手のように実務をこなしている。」なんてことも珍しくありません。
住宅が好き🩷
インテリアでも家具でも住宅に関わることなら何でもいいんです。
住宅が好きな人は、現場で構造躯体を見るだけでも感動できます。
黙々と作業をされている職人さんを見て「かっこいいなぁ」と思います。
そんな住宅好きが、建物の完成を目の当たりにしたときの感動は計り知れないでしょう。
その上、お施主さんに感謝なんかされたときには、辞められなくなります。
しかしながら、住宅業界は他の業界に比べ、平均年収が高い分、お金を稼ぐためだけに就職(または転職)する人も一定数おられます。そういった方々は、営業職で毎月のノルマに追われ続けることになります。
営業が天職であれば良いのですが、そうではない人がお金のためにノルマに追われ続けた結果、[住宅 営業 やめとけ]と検索しているのかも知れません。
誰とでも真面目に向き合える
住宅会社の中だけでもたくさんの職種がありますが、住宅を建てるとなると、もっとたくさんの職種の人と関わることになります。
デザイナーさんもいれば、職人さんやコンサルタントをしている人(筆者です)もいます。
職人さんの中には「昔はヤンチャしてたんやろなぁ」という人もいます。
コミュニケーション能力ではなく、真面目に向き合えるか?どうかが重要です。
住宅業界の将来性はあるの?
「少子化で住宅って今よりもっと必要なくなるんじゃないの?」
「住宅を建て続けたら、いつかいらなくなるんじゃないの?」など普通に考えて、新築住宅を建て続けると、いつかは余る時がくると思いますよね?
住宅の着工数も減り続けていると言われています。
木造住宅が大丈夫な理由 その1
まずはこのグラフを見てください。
引用元:国土交通省
減ったり増えたりしていますが、そんなに変わってませんね。
浮き沈みの大きさが住宅全体に比べると、若干木造の方が穏やかな感じがしますね。
この浮き沈みは、その年の出来事を見ると分かりやすいです。
2008年 | リーマンショック |
2014年 | 消費税が5%から8%へ |
2019年 | 消費税が8%から10%へ |
着工数が伸びていたのは、好景気と駆け込み需要が原因だったんですね。
そういった出来事によって、購買欲が一時は低下するものの、3〜4年かけて着工数は戻っています。
住宅の数は、浮き沈みがあるものの、総じて(特に木造は)そんなに減っていないのです。
木造住宅が大丈夫な理由 その2
海外では築100年の住宅というのは、よくあります。
しかし、日本は地震大国です。
住宅の購入を考える上で、どうしても耐震性を考えてしまいます。
30年近く経った中古住宅を、30年ローンを組んで買おうとはそうそう思わないですよね?
「ローン返済中に住めなくなるかも?」なんて考えてしまいます。
都心部などの住宅需要が地域では、販売価格の建物の占める割合が大きいため、新築と中古の差異があまりないんですね。
そのため、「もうちょっと無理して、新築にしよう」となってしまいます。
住宅会社で働くには?
住宅会社には、未経験で転職してくる方がたくさんいます。
例えばこんな方々
- 中古車販売店で働いていた
- WEBデザインの会社で働いた
- 携帯電話会社で働いた
- 保険会社で働いていた
- 銀行で働いた
- 学校の先生をしていた
- 証券会社で働いてた
- 転職エージェントとして働いていた
- アパレルショップで働いていた
- 専業主婦
- テレビディレクター
住宅会社には、色々な業界の方が転職してきます。
理由は住宅会社を経営するためには、たくさん職種が必要で、全ての職種で経験者を採用するのは不可能に近いからです。
会社の規模が大きくなるにつれ、未経験者でも即戦力になれるよう、様々な仕組みやカリキュラムが用意されています。
まとめ
- 住宅会社の平均年収は全国平均よりも格段に高い 【約1.6倍】
- 住宅が好きな人にとっては天国のような環境
- 住宅会社で働くために必要なスキルはたった2つ 【住宅が好き】【誰とでも真面目に向き合える】
- 景気や経済の影響を受けやすいが、まだまだ将来性がある。
- 住宅会社は未経験者でも大丈夫 【色々な業界から転職してくる】
- 年収だけで転職するとブラック化する
以上が住宅会社とはどんな仕事?でした。
この記事が読者さんの転職活動の参考になれば嬉しいです。