木造住宅の構造材って何がある?【種類と特長を分かりやすく解説】

住宅って専門用語がたくさんあって、頭がこんがらがりますよね?

この記事では、その中でも建物価格に大きく影響を及ぼす、構造材について解説いたします。

「構造材と言っても、柱とか梁くらいは分かるけど・・・」といった方が多いのではないでしょうか?

そんなブラックボックス的な構造材を、分かりやすく解説いたします。

住宅購入の参考になれば嬉しいです。

こんな悩みを解決します。

  • 木造住宅に使われている柱や梁って、どんな材料が使われているの?
  • 「国産材」ってよく目にするけど、国産材って何がいいの?

この記事を書いている人

廣岡 旬 Hirooka Jun

  • 元住宅メーカーの部長
  • 卒業設計コンクールで最優秀賞受賞
  • 設計担当した物件が建築雑誌に掲載
  • 住宅資材の開発に携わる
  • 用地仕入・施工・設計など携わった職種は多岐にわたる
  • 建築業界で20年以上従事
  • 現在は住宅のコンサルタントをしながら、住宅業界に関わる情報を発信

木造住宅に使われている構造材には大きく分けて、【品種】【産地】【樹種】があり、その中でも重要な部分だけを抜粋し、初心者でも理解しやすい内容にまとめました。

目次

品種

木造住宅の構造材といっても、丸太なのか?無垢材なのか?など色々な製造方法があり、この製造方法によってできた材料を品種と呼びます。

この記事では、代表的な【GRN材】【KD材】【集成材】【LVL】の4品種を抜粋して解説いたします。

GRN材

GRN材とはグリーン材の略で、未乾燥の無垢材を指します。

丸太を製材して角材にしただけの材料です。

このGRN材は主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)で利用することができません。

そのため、小屋部分(屋根の骨組み)などで利用されることがあります。

ただし、木材の乾燥は強度や耐久性に大きく影響を与えるため、建物では利用しないに越したことはありません。

KD材

KD材の断面写真
KD材

グリーン材を乾燥させた無垢材で【Kiln Dry Wood 】を略してKD材と呼ばれています。

後述する集成材やLVLなどが開発されるまでは、このKD材が主流でした。

KD材が製材されているイラスト

上図のように、1本の丸太から1本の柱(または梁)が製材されます。

乾燥されずに利用される材がグリーン材となります。

乾燥といっても、天然乾燥(天日干し)や機械乾燥など、色々な乾燥方法があります。

最低限、機械乾燥された材を利用するのが理想的です。

構造材の中では、一番価格が安い商品になります。

これまでKD材には明確な基準がありませんでしたが、【製材の日本農林規格(製材JAS)】という基準が制定され、強度を数値化することができるようになりました。
通常のKD材よりも割高になりますが、構造計算が必要な場合などに利用されたりしています。

全てのKD材が、製材JASを取得しているわけではないので、注意しましょう。

集成材

集成材の断面写真
構造用集成材

Engineer Wood】を略してEWと表記されたりしています。

KD材よりも少し価格が高くなりますが、強度を数値化した強度等級が明示されており、構造計算が可能となります。

KD材よりも強度が強く、その分価格も若干高くなります。

集成材が製造されるイラスト

上図のように、板材を貼り合わせて製造します。

板材はラミナと呼ばれ、【集成材の農林規格(JAS規格)】という基準に基づき、強度や張り方、乾燥度合を表す含水率などが定めれています。

ラミナの断面写真
ラミナ

このように、材料ごとに同一の基準で製造されることから、木材の問題点でもある【品質の安定】を実現することができています。

強度もあり、品質が安定していることから、カウンターなど幅広く利用されています。

集成カウンターの写真
集成材カウンター

LVL

LVLの断面写真
LVL

【Laminated Veneer Lumber】を略してLVLと呼びます。

集成材のラミナより、もっと薄い単板を貼り合わせて製造します。

強度はKD材や集成材よりも群を抜いて強いです。

主に荷重が大きくかかる部分や、大空間(柱と柱の距離が長い)などの梁として用いられます。

それだけの強度があるため、構造用集成材の2倍以上の価格となります。

木造住宅で利用されるケースは少ないですが、もしも構造材にLVLが明記されていた場合、その建物は構造設計上、無理をしている可能性が高いです。

産地・樹種

産地は国産材と外材(外国産材)の2種類に分類されています。

樹種は国産材と外材で、それぞれ3種類の主流な商品を抜粋して解説していきます。

国産材

構造材として利用されている樹種は、【スギ】【ヒノキ】【カラマツ】が主流です。

北海道ではトドマツが利用されたりしていますが、本州で利用されるケースは珍しいでしょう。

ヒバを利用するケースもありますが、かなり高価なため流通量は少ないです。

これらの樹種は全て針葉樹であり、【カエデ】【タモ】【カバ】などの広葉樹は構造材ではなく、家具などに利用されています。

国産材は、日本特有の急斜面の山で伐採されており、機械による伐採が困難なことから、人の手による伐採が不可欠です。

また、急斜面により林道などの整備も必要になることから、最終的な木材の販売価格が高くなってしまいます。

このような背景から、外材に対抗できる販売価格にするため、国や地方自治体が補助制度を設け、適正価格での販売を実現できている状況です。

ヒノキ

ヒノキ材の写真

木肌は白く、この見た目が、昔から人気の北欧テイスト寄りであるため、人気があります。

東農桧や、乾太郎などの企業オリジナルブランドも流通していることから、高価格で販売されている樹種でもあります。

スギやカラマツに比べ、木自体が固いため、釘などを打ち込む際に「パキッ」と割れることがあります。
そのため、小さい角材(45mm×45mm程度)の利用には、あまり向いていないでしょう。

カラマツ

木肌は赤く、木目はっきりしています。木肌の赤身と木目の濃淡がはっきりしているため、好みが分かれます。

産地の多くは甲信越から東北あたりのため、西日本エリアでは、あまり利用されていません。

反りや曲がりが起きやすいことから、無垢材に比べ、品質を安定させやすい集成材として利用されることが多いです。

スギ

スギ材の写真

木肌は赤く、木目はっきりしています。ヒノキやカラマツに比べ、強度が低いです。(比較すると低いだけであり、構造体としては問題ありません)

強度とは関係なく、木自体が柔らかいため、釘やビスなどがめり込みやすく、職人さんに嫌煙されがちです。

しかしながら、国産材の中で一番安価に手に入ることから、国産材をうたっている住宅会社の多くは、スギを利用してます。

全国各地で植林されていますが、温かい地域で育ったスギは、成長が早いため、強度が弱い傾向にあります。

逆に寒い地域で育ったスギは、時間をかけて成長していくため、強度が高い傾向にあります。

いづれにせよ、スギ自体の強度に問題はなく、【材の寸法】と【(柱や梁の)組み方】が重要です。

木の年輪は、強度に大きく影響を与えると言われています。
木の成長速度がゆっくりだと、年輪が密になり、密になればなるほど木の強度が高くなる傾向にあります。

コメントの付いた丸太の写真

小ネタ:バウムクーヘンの【バウム】はドイツ語で木という意味です。

外材(外国産材)

構造材として利用されている外材は、【レッドウッド】【ベイマツ】【ホワイトウッド】が主流です。(ホワイトウッドはスプルースと呼ばれます。)

土台材としてベイヒバが利用されることもありますが、高価格なため、ヒノキなど他の樹種を利用することがほとんどです。

これらの外材は緩やかな傾斜地で伐採されることから

外材は国産材に比べ、安価に手に入る上に、高い強度を有していることから、日本の木造住宅では【レッドウッド集成材】か【ベイマツKD材(無垢材)】を利用されることがほとんどでした。

このような外材に頼っている状況を打破しようと、日本政府が木材需給率の向上に取り組みとして、様々な補助制度を設けたり、企業によるSDGsなどの積極的な取り組みから、国産材需要が高まってきています。

こういった時代背景のさなか、ウッドショックにより、一時的に外材を入手することができなくなり、国産材需要はいっきに加速していきました。

レッドウッド

レッドウッドの写真

木肌は赤く、木目がきれいです。

原材料や製品は、主にヨーロッパから輸入されてくることから【欧州赤松】とも呼ばれています。

輸入商品のため、為替の影響を受けやすく、建設時の為替相場によって、国産材よりも高くなることがあります。

主に構造用集成材として利用されており、スギのなどの国産材に比べ、製造がしやすく強度も高いことから、構造用集成材の代表格と言えるでしょう。

現場による施工もしやすいことから、小さい角材(45mm×45mm程度)にも利用されることが多く、様々な用途で利用されています。

ベイマツ

ベイマツの写真

赤い木肌が特徴で、構造材の中で最も赤身を帯びています。

原材料や製品は、アメリカから輸入されるため米松(ベイマツ)と呼ばれています。

ベイマツも輸入商品のため、為替の影響を受けやすく、建設時の為替相場によって、国産材よりも高くなることがあります。

主に構造用KD材(無垢材)として利用されています。

KD材の中では一番といってもよいほどの強度があり、構造用集成材よりも安価なため、木造住宅ではかなりの割合で利用されており、構造用KD材の代表格と言えるでしょう。

ベイマツもレッドウッド同様、現場による施工もしやすいことから、様々な用途で利用されています。

ホワイトウッド

ホワイトウッドの写真

木肌は白く、木目の見た目も薄いことから、見た目がきれいです。

主に構造用集成材として利用されていますが、レッドウッドやベイマツよりもだいぶ少なめです。

かつては、「レッドウッドは粘りが強いため、梁材として利用し、ホワイトウッドは柱材として利用する」という住宅会社がちらほらありましたが、そもそも「レッドウッドは粘りが強い」というのが信憑性に欠けており、こういった利用方法は見かけなくなっています。

以上が【木造住宅の構造材って何があるの?】でした。住宅を建てる際の参考にしてもらえたら嬉しいです。

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