建売住宅の値引きができるって本当?【初心者向けイラスト付き解説】

建売住宅を購入するなら少しでも安く買いたい!

よく「値引きしてもらった」って聞くけど、いざ自分ごとになると、どうやっていいのか分からないですよね。

この記事ではこんな悩みを解決します

  • 建売会社って値引きしてくれるの?タイミングは?
  • そもそも値引きしてもらえる住宅/してもらえない住宅があるの?

買ってから後悔しないために、値引きのやり方について

住宅業界歴20年超えの筆者が分かりやすく解説いたします。

住宅購入の参考になれば幸いです。

この記事を書いている人

廣岡 旬 Hirooka Jun

  • 元住宅メーカーの部長
  • 卒業設計コンクールで最優秀賞受賞
  • 設計担当した物件が建築雑誌に掲載
  • 住宅資材の開発に携わる
  • 用地仕入・施工・設計など携わった職種は多岐にわたる
  • 建築業界で20年以上従事
  • 現在は住宅のコンサルタントをしながら、住宅業界に関わる情報を発信
目次

建売会社はどういったときに値引きをするのか?

カートに乗っている住宅

建売会社が値引きをするときは、ズバリ「売ってしまいたいとき」です。

「売りたいとき」ではなく「売ってしまいたいとき」です。

違いがよく分からないと思いますが、住宅会社は常に「売りたい」と思っています。

ですが「売ってしまいたいとき」というのは、次のどれかに該当したときに発動します。

  1. 長期間売れていない
  2. プロジェクト内で最後の1棟だけ売れ残っている
  3. プロジェクト内で建物完成前に最後の1棟だけとなっている
  4. 売上に計上したいとき

長期間売れていない

建売会社の多くは銀行から融資(借入)を受けて、建売事業を展開しています。

「なかなか売れないので、販促費をかけずに売っていこう」という、長期戦を挑もうとしても、融資に係る金利が発生するため、そんな悠長な売り方はできないということです。

また建売事業の場合、短期借入(1年以内に返済期日が到来する)で融資を受けるため、借入期間内に販売(資金化)しなければいけないという事情もあります。

では、建売会社が「長期間売れていない」と判断するのはどういったタイミングなのでしょうか。

下の図をご覧ください。

建売住宅のスケジュール

土地の取得と同時に融資が実行されるため、工事期間6ヶ月+販売期間6ヶ月の計12ヶ月で完売しなければいけません。

建売会社の多くは土地取得期間中(契約から引き渡しまで)に建築確認申請を済ましてしまいます。

注文住宅と違い、大半の間取りが規格化されており、図面完成のスピードが格段に早いため、必然的に建築確認申請の許可を取るまでの期間が短く済みます。

建売会社が土地を取得するまでに、確認申請の許可を得る最大の理由は、土地取得と同時に予告広告ができることです。

予告広告の詳細は割愛しますが、工事期間中でも販売活動ができるということです。

図にある6ヶ月の工事期間中に販売してしまえば、竣工と同時に完売となるわけです。

営業マンが現場で販売する必要もなく、広告宣伝費(チラシなど)も大幅にカットできます。

これらの内容から「長期間売れていない」とは竣工してから3ヶ月以上経過したくらいです。

この時期から値引き交渉に応じてもらえる可能性がグッと上がります。

工事開始から販売まで6ヶ月で行う建売会社もあります。

工事期間と販売期間

1つのプロジェクトを6ヶ月で終わらせるということは、同時に融資が完済できるということです。
その結果、もう一度融資を受けることができ、1年で2プロジェクト行うことができます。
こういった事業サイクルを業界では「年〇回転させる(年間に2プロジェクトできる)」と言います。
(このレベルになると、竣工後3ヶ月も売れていなければ「売ってしまいたい」気持ちはより大きくなります。)

例:工事開始から販売まで9ヶ月で行えば年1.5回転

建売会社の営業マンと商談する際、「御社の事業サイクルは年何回転ですか?」と聞いてみると、その物件が「売ってしまいたい」時期なのか知ることもできます。

プロジェクト内で最後の1棟だけ売れ残っている

暗い部屋にある住宅模型

建売会社は購入した1つの土地を、何区画かに分筆して住宅を建てて販売します。

現場経費や販売に係る費用などを抑えることができるという、メリットがあることは想像に難しくありません。

実は土地を区割りして事業化するのは、経費だけではなく、事業リスクを回避するという点でも、大いに効果が期待できるのです。

下の図をご覧ください。

プロジェクト単位の利益

1つの土地を4つに区割りして販売したときのケースです。

仮に1区画あたり500万円の利益を見越して、全て定価で売れた場合

利益500万円 × 4棟 = プロジェクト利益2,000万円

となります。

一方、がんばって販売活動をしたものの、最後の1棟は1,000万円の値引きを余儀なくされた場合

プロジェクトの値引

利益500万円 × 4棟 - 値引き1,000万円 = プロジェクト利益1,000万円

となります。

全て定価で売れたときよりも利益は減りましたが、プロジェクト(4棟)で考えたとき、1,000万円の利益を残せたことになります。

これが、1棟のプロジェクトだった場合には、こんなにも値引きをすることができません。

まとめるとこんな感じです。

  1. 4棟プロジェクトの場合 ⇒ 利益2,000万円の中で値引きができる
  2. 1棟プロジェクトの場合 ⇒ 利益500万円の中でしか値引きができない

会社によって考え方は違いますが、1つの土地にたくさん建てると、売れ残るリスクがあるものの、赤字プロジェクトになるリスクを回避することもできるのです。

3~4棟のプロジェクトで最後の棟が残っている場合、値引き交渉に応じてもらえる可能性が高いです。

費用面において数棟単位で販売するデメリットも存在します。

週末は営業マンが現地で販売活動をおこなっており、最後の1棟が売れるまで続きます。

言い方を変えると、営業マンは4棟でも1棟でも、現地に待機しておかないといけないわけです。

1人の営業マンが4棟担当するのであれば効率がいいですが、1棟で営業マン1人だと効率が悪いですよね。。

最後の1棟が何カ月も売れないと、会社側としては「はやく売ってしまって、次の現場で営業活動したい」となるわけです。

会社にとってラスト1棟はデメリットですが、購入者にとっては値下げ交渉できる絶好の機会です。

プロジェクト内で建物完成前に最後の1棟だけとなっている

建物完成前にラスト1棟という場合でも、値引きしてくれるケースがあります。

建物建築中の場合、定価で売れているケースがほとんどです。

確定した利益

仮にラスト1棟を残して、完成販売開始すると、広告費や現地販売員による人件費(販管費)が発生します。

また、1棟現場で営業マン1人というのは効率が悪いということもあります。

こういった状況から、完成前にお客さんが現れれば、多少値引いても販管費をかけずに済むため、「売ってしまおう」

となるわけです。

プロジェクトで少し値引きする

200万円値引いてもプロジェクト全体では1,800万円の利益となります。
現実的に販管費が200万円かかるわけではありませんが、営業マンを別のプロジェクトで現地販売せさることができるため、プロジェクトが黒字であれば、多少利益が目減りしても売ってしまう建売会社は少なくありません。

こういった心情は完成間近であれば、あるほど強くなってきます。

完成前のラスト1棟は、竣工間近が値引き交渉における絶好のタイミングというわけです。

売上に計上したいとき

建売会社が売上に計上したいときはズバリ決算月です。

家電量販店の決算セールと同じですが、なぜか住宅業界では大々的に「決算セール!」とはやっていません。

Googleで【決算 〇〇(購入したい建売会社名)】と検索すると出てきます。

企業の多くは3月末のため、3月が値引き交渉の絶好のタイミングとなるわけです。

ただし住宅の場合、一般的な商品と違い、買うと言ってもすぐ手に入るわけではありません。

現金一括なら比較的早く引渡しできますが、それでも即日というわけにはいきません。

多くの方はローンを組むため、下記のような流れになります。

  1. 申込(ローン事前審査)
  2. 契約
  3. ローン申し込み
  4. 引渡し、残代金支払い、登記

ローンの事前審査は銀行によって期間が異なりますが、①~④まで概ね1ヵ月(早くても3週間)はかかります。

これらの期間を踏まえ、決算が3月末の建売会社の場合、2月下旬~3月初旬が値引き交渉における絶好のタイミングと言えるでしょう。

この住宅版決算セールは上場会社であれば、売上が株価に直結するため、更なる効果が期待できます。

まとめ

値引きできるタイミング

  • 完成販売後3ヶ月以上経過している(長期間売れていない)
  • 3棟以上のプロジェクトで、最後の1棟だけとなっている(はやく売ってしまいたい)
  • 3棟以上のプロジェクトで、完成間近に最後の1棟だけとなっている(販管費かけずに終わらせたい)
  • 決算日の1カ月前(売上に計上したい)

言い換えれば、上記タイミング以外だと、値引きしてもらえない可能性が高いということになります。

値引き交渉できる住宅/できない住宅

OKとNGのサイコロ

値引き交渉できる建売住宅は販売会社が売主である場合です。

「住宅を作った会社が売るのだから当然でしょう」と思われますが、建売住宅の場合は必ずしも売主が販売しているわけではありません。

販売している会社は大きく以下の3種類に分かれます。

  • 売主本人
  • 仲介業者
  • 販売代理会社

売主本人

自社で職人を手配して施工したのか、下請け工務店に一括で依頼しているのかなど、細かいことは抜きにして「事業主」が直接販売をおこなっているということです。

値引き交渉に応じてもらえる可能性が一番高いケースです。

仲介業者

売主(建売会社)と買主(住宅購入者)を仲介する業者です。

住宅のような高額商品になると、売主と買主を結びつける商売(仲介業)で生計を立てている会社が多く存在します。

住宅業界では「仲介」のことを「媒介」と言われたりします。

仲介業者の中には、商品(住宅)知識の豊富な業者もいますが、それでもただ仲介しているだけなので、価格交渉をする権利は一切ありません。

仲介業者にどれだけ値引き交渉したところで、あまり意味がないでしょう。

仲介業者を介して購入する場合、3%(+消費税)の仲介手数料が発生します。

仲介業者はこの手数料で商売をしています

たった3%と侮ってはいけません。

販売価格3,000万円 × 3% = 90万円 +消費税

上記の例で消費税を含めると99万円となり、100万円近い手数料が発生することになります。

販売代理会社

建売会社の中には、何百棟も販売している会社が多く存在します。

これだけの棟数を、自社の営業マンだけで販売するのはとても大変です。

前述した仲介業者に依頼すれば、仲介手数料が発生する上に、売れても売れなくても仲介業者は、全く責任を負う必要がありません。

売れやすい建物ばかりを仲介して、売れにくい建物は知らぷりというのは業界あるあるです。

そこで登場してくるのが販売代理会社です。

建売会社は販売を依頼する会社に代理権を与え、集客から引き渡しまでの販売に関わる一連の業務を委託します。

実際には代理権を与えたからといって、販売責任を負うわけではありませんが、販売代理会社は業務の委託を受ける以上、仲介(媒介)のようにはいきません。

販売代理会社は、大手建売会社と継続的に取引していることが多く、販売委託を受けているプロジェクトを早期に完売させることで、次は「売れやすいプロジェクト」を担当させてもらおうとします。

売れなければ継続取引も解消されてしまう恐れもあるため、必死に営業活動を行います。

住宅を購入する側からすると、その必死さが「この人が担当で良かった」と感じることでしょう。

ただし、値引き交渉に応じてもらえるかは別問題です。

販売代理会社は「事業主」ではないため、価格交渉をする権利は一切ありません

そこまで代理権を与えている建売会社はまずいないでしょうが、仲介業者より交渉に応じてもらえる余地は十分にあります。

売主(建売会社)も、毎回値引かないと販売できない会社であれば、別の販売会社へ委託します。

販売している会社(取引様態)の調べ方

ライフルホームズなど住宅情報サイト内の「物件概要」ページに「取引様態」という欄があります。

ここに「売主」と記載されていれば、売主本人(事業主)が販売会社となりますが、必ずしも「売主」=「事業主」とは限りません。

「販売代理会社」の場合も「売主」と記載されているので、注意しましょう。

「仲介(または媒介)」と記載されていれば、仲介業者が販売していることになります。

売主本人(建売会社)が仲介手数料でも儲けようと考え、仲介を行う子会社を設立し、仲介しているケースもあるので、注意しましょう。

この記事が皆さんの住宅購入のお役に立てれば嬉しいです。

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