夢のマイホーム、できるだけ無駄なく、理想に近づけたいですよね。でも、「何にどれだけ費用がかかるのか分からない」という悩みは多くの人が抱えています。この記事では、住宅業界歴20年以上の筆者が、
- 建物と土地、それぞれの【価格の内訳】
- 【コストダウンのコツ】を分かりやすく解説します!
理想のマイホームづくりに、ぜひお役立てください。
この記事で分かる内容
- 住宅の中で多くの費用がかかる部分はどこなのか?
- 費用を安くするには、どこを抑えればいいのか?

この記事に出てくる金額やパーセントなどの数値は、筆者の経験値に基づいて試算しております。
ですが住宅の費用は【場所】【間取り】【仕様】によって大きく変わるため、必ずしもすべての住宅に当てははまるものではございませんので、あくまで参考として考えていただけると幸いです。
この記事を書いている人


廣岡 旬 Hirooka Jun
- 🏠 自らマンション&注文住宅を購入した経験を活かし、ユーザー目線で専門情報を発信。
- 💼 設計事務所・分譲住宅会社・注文住宅会社など、さまざまな業態を経験。
- 📈 転職活動では13社のエージェントを活用し、業界内のキャリア形成にも精通。
- X(旧Twitter)では約3,000人のフォロワーに支持され、有益な情報を発信している。
住宅に関する費用


住宅の費用に関する項目はざっくり次のような内容です。
項目 | 価格 |
土地 | 場所による |
建物本体工事 | 1,000万円~ |
付帯工事 | 200万円~ |
諸経費 | 150万円~ |
これだけ見ると1,300万円で建つのか!?と思われますが、うどんで例えると「素うどん」と思ってください。とくに付帯工事は「フラットで頑丈な地盤の上に、植栽もフェンスもない土だけ」くらいな感じとお考え下さい。ここでお伝えしたいことは、建物本体価格の割合が大きいということです。付帯工事は土地に付随する工事が大半を占めるため、自分たちで調整することが難しい項目です。諸経費も設計や現場管理に関わる費用のため、ここも調整することが難しい項目です。こういった内容から、安く建てようとすると建物本体価格にフォーカスするのが一番効果が見込めるということです。



実際は土地価格の占める割合が大きくなることもよくありますが、住む地域によって何千万円もの開きがでるため、ここでは割愛します。
では、建物本体価格がどんな内訳になっているのか解説してきます。
建物本体価格


建物本体価格の内訳はこのようになります。会社によって若干表記が違いますが、内容は同じです。
工事名称 | 内容 |
仮設工事 | 仮設トイレ/足場など |
基礎工事 | コンクリート/鉄筋など |
木工事 | 構造材/建材など |
大工工事 | 大工さんが行う工事 |
内装工事 | クロス/畳など |
外装工事 | 外壁/屋根など |
建具工事 | アルミサッシ/木製建具など |
電気設備工事 | 電気配線/照明器具など |
衛生設備工事 | トイレ/給排水配管など |
ガス工事 | ガス配管/床暖房など |
左官工事 | 土壁/タイルなど |
塗装工事 | ペンキ塗装/吹付塗装など |
鉄骨工事 | 鉄骨階段/鉄骨手摺など |
ガラス工事 | ガラスなど |
防蟻工事 | シロアリ剤施工など |
雑工事 | 産廃処理/クリーニングなど |
下のグラフは建物本体価格のうち、各工事が占める割合を示しています。建物規模は2階建ての木造住宅で延床面積30坪程度です。


木工事と外装工事が全体の約半分を占めているのが分かります。この2つの工事費用を無視して、他の工事費用を一生懸命抑えようとしても、大きな効果を得ることはできません。



本体価格が1,000万円だった場合
木工事:321万円
外装工事:153万円
大工工事:95万円
建具工事:95万円
衛生設備工事:89万円
基礎工事:86万円
その他工事:161万円
それでは木工事と外装工事をもう少し掘り下げていきましょう!
木工事
木工事には構造材をはじめ、木質系の床材や造作材など、まさに木に関する工事です。下のグラフをご覧ください。


なんと木工事における構造材の割合が54.1%も占めています!割合は工法や材料によって変わりますが、どんな仕様にせよ、かなりの割合を占めることは間違いありません。



木工事が500万円だった場合の構造材費用は約270万円も占めることになります。
コストを下げるたった1つの方法
建物の構造に関わるので「安い柱でもOK!」というのは避けたいですよね(笑)材料を変えずにコストを下げるたった1つの方法をお教えします。それはシンプルな間取りにすることです。簡単に書きすぎてますので、もう少し詳しくご説明します。具体的には間取りを考えるときに以下のことを意識してください。
- 柱と壁(内壁も外壁も)は1階と2階を揃える
- 角数を少なくする
1.柱と壁は1階と2階を揃える
1階と2階の柱の位置がずれていると、柱と柱の間を隔てる壁もずれている可能性が高くなります。ずれた柱や壁を梁が支えなければいけなくなり、高強度な梁が必要になります。梁の強度が高くなればコストアップにつながります。また、建物の構造計算には【偏心率】というものがあり、これは簡単にいうと【建物のバランス】のことです。建物のバランスが悪いと、バランスを保つために【耐力壁】という構造上重要な壁を沢山配置しなくてはいけなくなり、これもコストアップにつながります。1階と2階の柱と壁が揃っていると、この偏心率が小さくなる(バランスが良くなる)傾向にあります。
2.角数を少なくする
【画数】ではなく【角数】なのでご注意ください。角数というのは造語になりますが、建物の角を数を減らすということです。住宅業界ではコストを下げるには
- 外壁の長さを短くする
- 出隅、入隅を減らす
ということが、有効的であることはよく知られています。
外壁の長さを短くするとは?
平面上で見た外壁の長さによって、外壁材をもちろんのこと、それに付随する基礎や外壁下地、断熱材など色々な材料の使用量が増えていきます。そのため、外壁の長さを短くすれば、外壁材だけでなく、それに付随する材料の使用量が減っていくため、コストを下げることができます。角数が増えると、外壁が長くなります。
出隅、入隅を減らすとは?
出隅というのは建物のでっぱている角のことで、入隅というのはへこんでいる角のことです。文章だと分かりにくいので、下のイラストをご覧ください。


お粗末なイラストですみません。。角数を減らす=出隅、入隅を減らすということです。ではなぜ角を減らすことが、コストを下げることにつながるのか?実は建築資材の多くは出隅、入隅それぞれに対応した商品が存在します。業界用語で【役物(ヤクモノ)】といわれていますが、この役物が高いんです。また角が多ければ、施工の手間もかかり、場合によっては【施工手間賃】として追加請求されるケースもあります。
木工事費用を抑えられる建物は
- 1階と2階の柱、壁が揃っている間取り
- シンプルに四角い建物
となります。ハウスメーカーの【規格住宅】を見ると、概ねこのような建物になっています。
外装工事
外装工事とは外壁をはじめ、屋根やベランダの防水に関する工事です。では、どんな内訳になっているのかグラフをご覧ください。


外壁の割合が50.7%も占めています!割合は材料によって変わりますが、外壁材の選定がコストに大きな影響を与えているのは間違いなさそうです。



外装工事が300万円だった場合の外壁工事費は約152万円も占めることになります。
2階建ての木造住宅で延床面積30坪程度の規模だと、外壁の面積は200m2くらいになります。外壁材価格はピンキリですが、5,000円(1m2あたりの金額)高くなるだけで1,000,000円もコストアップにつながります。一方、その他の中に含まれている屋根工事の場合、形状によって変わりますが、屋根の面積は70m2くらいになります。屋根材価格は瓦など高価なものを選ばなければ、仕様によってせいぜい3,000円(1m2あたりの金額)高くなるくらいで、210,000円程度にとどまります。コストダウンは1個1個の積み重ねですが、効果的な部分から順に吟味していきたいですね。
建具工事
建具工事と玄関扉やアルミサッシ、それと室内の木製建具工事などに関する工事です。では、恒例のグラフをご覧ください。


アルミサッシの割合が72.6%も占めているのがわかります。そもそも建具工事は建物全体の9.5%しか占めていないので、木工事や外装工事に比べると、そこまで費用はかからないように思えますが、アルミサッシは地域や仕様によって価格差が激しく変わってきます。木製建具も同様で仕様によって大きく変わってきます。
の9.5%の数値は必要最小限の費用だと思ってください。
アルミサッシ
2階建て木造住宅(延床面積30坪程度)で4LDKの場合、窓の種類は様々ですが約18窓(玄関扉含む)ほど必要となります。ハイグレードな窓を選ぶと1窓あたり50,000円くらい高くなることもありえます。アルミサッシだけで900,000円もコストアップにつながります。
木製建具
2階建て木造住宅(延床面積30坪程度)で4LDKの場合、約17枚ほどになりこの中にはクローゼットの扉も含まれます。扉はグレードによって、ざっくり1~6万くらいの価格差があるため、グレードアップでプラス30,000円になると、510,000円もコストアップすることになります。玄関扉は金属建具工事になりますのでご注意ください。規格注文住宅や建売住宅の場合、アルミサッシや木製建具のグレードが低く設定されていることが多いです。
衛生設備工事
衛生設備工事とはキッチンやトイレなどの住設機器をはじめ、敷地内の給排水引込に関する工事です。


67.1%が住設機器となっています。住設機器は、こだわった分だけ高くなることは想像に難くないかと思いますので、解説は割愛します。注意が必要なのは、その他工事に含まれている給排水工事です。給排水工事は次の2つに分かれます。
- 敷地内の給排水工事
- 公道(道路)から敷地まで給排水工事
1は衛生設備工事に含まれますが、2は付帯工事となります。住宅会社によっては、1が宅内(建物の中)だけのケースもあります。引き込む距離によって金額が大きく変わるため、どこまでの範囲なのか確認したほうがよいでしょう。給排水引込工事は条件によって、金額が大きくぶれる上に、コストダウンを行うことが難しい工事でもあります。
その他工事
その他工事には電気設備工事や内装工事など10工種含まれていますが、どの工事も建物本体価格に占める割合は5%以下です。例えば建物本体価格が1,500万円だった場合、1工事あたり最大75万円程度ということになります。最大でこれだけなので、一生懸命ここの部分の工事内容を減らそうとしても、効果は薄いということです。ただし、注意が必要なのは電気設備工事、内装工事です。照明工事や照明器具によって大きく差がでます。これは分かりやすいかと思いますが、規格注文住宅の場合、照明器具はダウンライトなど施工を伴う器具以外を別途工事にしているケースが多いです。クロス工事はビニールクロスのグレードによって大きく差がでます。壁と天井で1棟あたり約400m2ほどになりますので、グレードアップでプラス1,000円になると、40万円もコストアップすることになります。規格注文住宅や建売住宅の場合、これらのグレードが低く設定されていることが多いです。
まとめ


誤解を恐れずに金額を明示しましたが、冒頭説明のとおり、住宅の価格は【場所】【間取り】【仕様】によって大きく変わってきます。ですが、内訳をしっかり理解すれば、想定外の出費を回避することは可能です。



おさらいします。
- 住宅費用は【建物本体価格】【付帯工事】【諸経費】に大分されるが【建物本体価格】占める割合が大きい。
- 建物本体価格の内【木工事】と【外装工事】が47.4%も占めている。
- 建物本体価格を安くするにはシンプルな間取りにすることが重要。
- シンプルな間取りとは【柱と壁は1階と2階を揃える】【角数を少なくする】こと。
こういったことを考慮せずにプランニングする設計士が意外に多いです。「プロだからお任せしよう。」ではなく、依頼する側も知識を持って相談することが重要です。この記事が読者さんの、住宅購入のお役に立てれば嬉しいです。