住宅メーカーへの転職はやめとけ?その理由を元住宅メーカー部長が教えます

ネット上では「ハウスメーカーの仕事はブラック?」や「住宅営業はやめとけ」「ハウスメーカーの営業はきつい?」など、散々な書かれ方をしています。

でも、筆者は【住宅に興味がある人】や【建築が好きな人】なら、住宅メーカーへの転職をおすすめします。

「好きだったら長時間労働ができる!」「好きだったらきついこともできる!」というわけではありません。

大事なのは住宅メーカーの中で、自分に合った仕事を確かめることです。

住宅メーカーでどんな仕事をするかによって、天国にも地獄にもなりうるということです。

この記事ではこんなことを紹介します。

  • 住宅メーカーへの転職はやめとけと言われる理由
  • 住宅メーカーで自分にあった仕事の見つけ方
  • 住宅メーカーの良いところ

これらを内容を、元住宅メーカー部長の視点と経験からご紹介いたします。

住宅業界への転職に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いている人

廣岡 旬 Hirooka Jun

  • 元住宅メーカーの部長
  • 12社の転職エージェントを利用し、実際に8社と面談
  • 設計事務所から住宅会社へ転職
  • 分譲住宅会社から注文住宅会社へ転職
  • 建築業界で20年以上従事
  • 現在は住宅のコンサルタントをしながら、住宅業界に関わる情報を発信
目次

住宅メーカーへの転職はやめとけと言われる理由

「住宅メーカーはやめとけ」と言われる、代表的な理由を紹介します。

  1. ノルマがきつい
  2. 長時間労働
  3. 体育会系なノリでパワハラ気味
  4. 平日が休みで土・日・祝日は商談
  5. 基本給が低く、インセンティブが大きい(超成果主義)
  6. 高額商品なため、クレームになりやすい
  7. 専門的で覚えることが多い

1 ノルマがきつい

「やめとけ1番の理由」といっても過言ではありません。

どこの住宅メーカーも、毎月1棟の契約をノルマとすることが多いです。

「毎月1棟の契約って案外楽じゃね?」と思ったあなたは、天才的な営業センスの持ち主か、1ヶ月もしないうちに辞めてしまうダメダメ営業マンのどちらかです。

建売住宅を毎月1棟契約(年間12棟)できれば、営業マンとしては優秀な部類に入ります。

これが注文住宅となれば、トップ営業マンです。

住宅営業に必要なのは、営業スキルではありません。

必要なのは坊主(その月の契約数0棟)になって何回、何十回と上司から叱責されても、屁とも思わないくらいのメンタルです。

2 長時間労働

住宅営業は他の営業職に比べ、拘束時間が長いです。

その理由の1つに、高額商品を扱っているということが挙げられます。

お客さんは生涯に1度の大きな買い物をしようとしているため、営業マンに対し様々な質問や要求をおこなってきます。

これら全て、お客さんの納得がいく回答を提示しなければ、そこで終了です。

また、お客さんの多くはローンを組んで購入するため、銀行によるローン審査を行うための、重要な書類作成と手続きが必要となります。

土地や建物の売買契約書や重要事項説明書など、これも重要な書類作成と手続きが必要となります。

注文住宅となると、建物や土地の金額を提示するため、見積書の作成も必要となります。

これだけ沢山の書類と手続き(しかも全てが重要書類)を必要とする商品は、そうそうありません。

これが他の営業職に比べ、拘束時間が長い理由です。

建物と土地の価格について、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

3 体育会系なノリでパワハラ気味

ノルマがきつい時点でパワハラ気味なムードがただよってきそうですが、「体育会系なノリ」というのは多くの住宅メーカーで見受けられます。

その理由の1つとして、従業員全体のうち、営業人員の割合が少ない(ざっくり10%くらい)にも関わらず、ほぼ全ての部門の費用と利益を稼ぎ出していることが挙げられます。

この少数精鋭の営業部は、きついノルマを耐え抜いて今もなお、成果を上げ続けている猛者たちです。

会社がこんな猛者たち(営業部)の影響を強く受けるのも当然です。

多くの住宅メーカーでは、このスパルタカス的な営業部の雰囲気が、色濃く出てきます。

それが、外からみると「体育会系なノリ」に映るわけです。

4 平日が休みで土・日・祝は商談

お客さんのほとんどが平日は働いています。

そのため、商談は土・日・祝日で行われます。

家族や友達とも会える時間が少なくなるもの当然です。

常に何組かのお客さんと、現在進行形で商談が進んでいることから、お盆や正月以外で長期休暇を取ることも難しいです。

当然のことながら、銀行や市役所などは、土・日・祝日は休みです。

したがって、平日に重要書類の手続きを行い、土・日・祝日にお客さんと商談することになります。

よほど容量良く仕事をしなければ、休みがなくなってしまうという事態に陥ります。

5 基本給が低く、インセンティブが大きい(超成果主義)

ノルマがきつい分、達成したときの果実(インセンティブ)は、異業種における営業職の中でもトップクラスと言えるでしょう。

逆にノルマ未達に終わると、どの部門よりも低い給料になるといっても過言ではありません。

この超成果主義と厳しいノルマのダブルパンチが、「住宅営業やめとけ」に拍車がかかっているわけです。

6 高額商品なため、クレームになりやすい

数百円の商品を買う際、店員さんの接客態度が悪かったり、商品知識が浅く、説明がうまくできなかったりしても、目くじらを立てて怒り狂うということはないでしょう。

数千万円かつ生涯使い続ける可能性が高い商品となると、話は別です。

身なり一つとっても「こんなヨレヨレなスーツを着た営業マンから買いたくない」となります。

商品説明がうまくできない(知識不足)と「私たちはこの家に一生住むんだぞ!」となります。

注文住宅の場合、現物を見るのは完成後となるため「打ち合わせ時の仕様と違っている」ということも起こります。

想像しただけで鳥肌が立ちますよね?

7 専門的で覚えることが多い

住宅メーカーにおける仕事の多くは専門職です。

そのため、最初は覚えることが多く大変です。

  • ローン計算
  • 売買契約書の内容
  • 重要事項説明書の内容
  • 建物に関わる知識(設計・施工など)
  • 建物に使われる建材の価格
  • 住宅デザインのトレンド
  • 法律の知識(不動産・設計・建設など)
  • 専門用語の数々

など、これらを段階的に覚えるのではなく、まとめて頭に叩き込まないといけないため大変です。

内容によっては、月1回・年1回の頻度で行う業務もあり、「せっかく覚えたのに、忘れちゃった」なんてことも。

大前提

これらの内容はほとんど営業に当てはまる内容です。

住宅営業に必要なのは知識でも、スキルでも、経験値でもなく【鋼のメンタル】です。

このベースがないと「住宅営業やめとけばよかった」ということに。。

(慣れによって、後天的に鋼のメンタルが身につくこともあります。)

メンタルに自信がない方に対しては、筆者も「住宅営業はやめとけ」とお伝えします。

これら7つの項目は「住宅メーカーやめとけ」ではなく「住宅営業やめとけ」です。

多くの「やめとけ記事」」では住宅営業にフォーカスして書かれています。

次の章では、その他の職種も交えて「住宅メーカーはやめとけ」が気にならなくなる方法を説明していきます。

「住宅メーカーはやめとけ」が気にならなくなる方法

住宅業界でも例外なくブラック企業が存在しており、そういった企業が一定数存在していることで「住宅メーカーやめとけ」と言われるのは事実です。

どの業界でもブラック企業を選ばないというのは大前提です。

ここでは「住宅メーカーはやめとけ」が気にならなくなる対処法をご紹介します。

  • 住宅営業以外の職種を選ぶ
  • 住宅メーカーで活かせる資格を取る
  • 住宅メーカーに向いているかを把握する
  • 自分に合った住宅メーカーが見つかるまで転職し続ける

住宅メーカーは営業だけではありません

なぜかWEBサイトを検索すると「住宅営業」ばかりがフォーカスされています。

当たり前ですが、住宅メーカーは営業だけではあります。

具体的には次のような仕事があります。

これらの職種の中で、直接お客さんと接しなくてもよい職種があります。

代表的なものを4つほどご紹介します。

ちなみに筆者は、個人のお客さんに住宅を1棟も売ったことがありませんし、お客さんと商談したこともありません。

用地仕入部門の試算業務【事業計画書の作成】

仕入担当者が収集した用地(土地)情報を基に、自社の建物が建てられる土地なのか?採算が合うのか?ニーズのある土地なのか?などを検討する、いわゆる事業計画書を作成します。

この事業計画書を基に、土地を購入するかどうかを判断します。

設計部門の基本設計/構造計算/実施設計

プランナーがお客さんと打ち合わせで決めたラフプランを基に、図面を作成する仕事です。

ただし、規模によってはプランナーと基本設計を兼務でおこなっている住宅メーカーもあるため、転職の際、設計部門ではどういった役割分担をしているのか、ヒアリングしたほうが良いでしょう。

積算部門

見積業務、発注業務、請求業務どの業務も、お客さんと接することはありません。

これも、規模によってはメーカーさんや業者さんとの交渉が必要であったり、積算作業だけをおこなう企業もあります。

中には、積算と施工を兼務でおこなう企業もあります。

施工部門

発注業務全般(職人手配、資材手配)が該当します。

発注担当者がメーカーさんや業者さん、職人さんとのやりとりをおこなう企業もあります。

住宅メーカーで活かせる資格を取る

住宅メーカーで活かせる資格があれば、多くの悩みが解消されます。

これらの資格は転職に有利な国家資格や、キャリアアップ形成に役立つ職種があります。

職種資格
用地仕入部門宅地建物取引士
設計部門1級(または二級)建築士
施工部門1級(または二級)建築施工管理技士

どこの住宅メーカーも、これらの国家資格取得者を常に探しており、ほとんどの企業は、これらの有資格者に対し、資格手当が付与されます。

また、これらの資格は国家資格にも関わらず、比較的合格率の高いところも魅力の一つです。

他の国家資格と比較しながら見てみましょう。

合格率
宅地建物取引士約16%
1級建築士約16%
1級建築施工管理技士約44%
司法書士約5%
社会保険労務士約7%
引用元:日建学院、資格の大原、総合資格

宅地建物取引士や1級建築施工管理技士は、試験勉強期間が3ヶ月前後で合格している方も結構います。

筆者は実際に宅地建物取引士(嫁は1級建築士)を取得しているので、興味のある方は「筆者の体験談」をご覧ください。

筆者の体験談

筆者は宅地建物取引士の試験勉強期間は9ヶ月でした。1回落ちているので、その時の試験勉強期間は6ヶ月だったので、延べ15ヶ月でした。

専門知識が必要ではあるものの、文法問題的な内容が多く、住宅業界未経験者(主婦や学生)でも合格している方がたくさんいます。

ちなみに筆者のスペックは偏差値36くらいの高校を卒業し、大学へ進学できず、専門学校を卒業しております。

また、1級建築士は学科試験と設計製図試験の2回試験があることと、専門知識が必要なため、難易度は他の資格に比べ高めです。

筆者の嫁が1級建築士を取得していますが、彼女は、学科試験勉強期間12ヶ月で、設計製図試験勉強期間12ヶ月でした。

嫁のスペックは某私立大学を主席で卒業しております。

住宅メーカーに向いているかを把握する

住宅メーカーで業務に順応するためにも、そもそも住宅に関わる仕事に向いているかを、最低把握したほうがよいでしょう。

住宅メーカーに向いていない人

次のいづれかに該当する方は、住宅メーカーに向いていない可能性があります。

  • 住宅(建物)に興味がない
  • 計算が苦手
  • ルール(工程)通り進まないと嫌
  • ミスや失敗を隠そうとする
住宅に興味がない

魚介類を嫌いな人が寿司屋さんに食べに行くようなもので(笑)、住宅メーカーで勤める以上、何かしらそれに関わることになります。

そこに興味がないのに、住宅メーカーに勤めるのはあまりオススメできません。

計算が苦手

建築学科が理系であるように、どこの部署でも計算はついて回ります。

計算といっても、関数解析学とか微分方程式論といった、高度な数学ができないといけないわけではなく、数値に対して拒絶反応がなければOKです。

事業計画書や積算書に出てくる、数字の羅列を見て目を背けたくなる方は要注意です。

ルール(工程)通り進まないと嫌

住宅というのは、お客さんや(職人さんの)施工スピード、天候など様々な要因によって、当初計画していた工程からズレることが多々おきます。

1度決めたルール(工程)が、変更になることなんて日常茶飯事です。

こういったルール(工程)の変化を許容できない方は要注意です。

ミスや失敗を隠そうとする

こういった方は、どんな業界いっても順応することは難しいですが、住宅の場合は大事故に直結します。

建物が完成した後に、「扉が入らなかったので、柱をずらしました」なんてことをしてしまうと、完全に欠陥住宅です。

それを是正するのに何百万円も費用がかかることもあります。

是正するただけならまだしも、お客さんから「建て直せ!」なんて言われた時には、数千万クラスの損失になってしまいます。

自分に合った住宅メーカーが見つかるまで転職し続ける

これが最強でしょう。

転職し続けることで「やめとけの理由7つ」全てを解消できる可能性がグッと高まります。

住宅メーカーの中には

  1. ノルマがない
  2. 定時であがれる
  3. 個人を尊重してくれる
  4. 土・日・祝日休み
  5. 基本給が高い
  6. お客さんと商談しなくてもよい
  7. 最低限の専門知識があればよい

といった会社も存在します。

筆者がそれに近かったです。

住宅メーカーへの転職について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

住宅メーカーの良い部分

住宅メーカーにも魅力的な部分がしっかりとあります。

筆者が20年以上、住宅業界に身を置いているのは、この良い部分のほうが強いと感じているからです。

  • 年収が高い
  • ワークライフバランスが取りやすい
  • 住宅・不動産に関わる専門知識が身に付く
  • 専門性を証明する資格がある
  • やり方次第で残業を減らすことができる

特に①はデスクワーク系の職種も、他の業界比べて高いのが魅力的です。

住宅業界の年収について、詳しく知りたい方はこちらの記事もぜひ読んでみてください。

まとめ 【住宅営業だけやめとけ】

「住宅メーカーはやめとけ」と言われる理由は以下の7つでした。

  1. ノルマがきつい
  2. 長時間労働
  3. 体育会系なノリでパワハラ気味
  4. 平日が休みで土・日・祝日は商談
  5. 基本給が低く、インセンティブが大きい(超成果主義)
  6. 高額商品なため、クレームになりやすい
  7. 専門的で覚えることが多い

でもこれらは「住宅営業はやめとけ」ですが、これらを解消する方法として

  • 住宅営業以外の職種を選ぶ
  • 住宅メーカーで活かせる資格を取る
  • 住宅メーカーに向いているかを把握する
  • 自分に合った住宅メーカーが見つかるまで転職し続ける

これらの方法があります。

これらの解決方法を駆使して

  • 年収が高い
  • ワークライフバランスが取りやすい
  • 住宅・不動産に関わる専門知識が身に付く
  • 専門性を証明する資格がある
  • やり方次第で残業を減らすことができる

といった、働き方を実現させることができます。

最後に住宅メーカーについて、もっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も読んでみてください。

この記事が読者さんの転職活動のお役に立てれたら嬉しいです。

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